[175]高齢者旅行の障害 Failure of the elderly travel
障害とは、1️⃣物事の成立や進行の邪魔をするもの。また、妨げること。しょうげ。2️⃣身体の器官が何らかの原因によって十分な機能を果たさないこと。また、そのような状態。3️⃣個人の特質としての機能障害(inpairment)、そのために生ずる制約としての能力低下(disability)、その社会的結果である社会的不利(handicaps)を包括する概念。4️⃣「障害競争」の略。
【2016年(平成28年)1月のFece Bookの文章より移行】
これまで書き綴ってきたように、ユネスコによる世界遺産が認定され続ける度にそこへの観光客が飛躍的に増加すると共に、認定による各種弊害が起きてきている。
ユネスコを主体とした世界遺産条約での人類共通の遺産の保護だけに限らず、また、そこを訪れる観光客の対象を健常者だけとせずに、その対象をとりわけ国連の世界人権宣言に即した弱者(高齢者・身障者・介助者等)においても、その国境を越えた人の移動を可能とすべき国際観光システムの構築が切に望まれる。
例えば観光地を訪れた際に利用するホテルの場合、国や地域によって危険を伴う不統一な環境を改善して人の安全を保護することが、遺産の保護と同様に重要である。
私は、90歳代の高齢の母親を伴ってその介助をされながら、国内外の旅行を自ら実施されておられる関西の男性にこの1年間折に触れ取材を実施してきた。
そのデータを基に、具体的な内容を下記に列記する。
① 五つ星のホテルとは何か。例えばソムリエの「基準」とどう違うのか。誰のための基準なのか。星のランクの決定の仕組みや構成員の透明性、国際基準の方向性が不明瞭故高齢者にとって誤解を及ぼす表示である。
② さらにそのことについて報道されていないことだけ一つをみても、旅行業界や報道業界の職業倫理に対して疑問を感じる。
③ たとえ高齢者や身障者向けの部屋はあっても、その部屋からの見晴らしが健常者のそれより極端に良くない。
④ したがって見晴らしの良い健常者用のホテルの部屋にしたが、広いトイレはデザイン重視のためなのか摑まるところ(手摺り等)がなく(例えば、シンガポールの五つ星、ハワイ等海外のホテル)、高齢者にとっては危険であるどころか命懸けだった。
⑤ またトイレや風呂の床は大理石で滑りやすく、高齢者にとっては危険極まりなく命を懸けた正に拷問に匹敵する程の精神的苦痛を伴った。
⑥ スリッパも高齢者にとっては歩行上危険である。持参した靴の方が安全であった。
⑦ 又、日本でウオシュレスの習慣がある為、冷たい便器やウオシュレスでない事は、介助者に余分な負担を強いることとなり旅行全体の目配り・気配りに影響をきたし、安全 面・衛生面・健康面に不安を感じた。
また、ホテル以外の観光産業に携わる中の、旅行会社の従業員や、介護施設に従事して いる人、医療に従事している人、輸送業等の従事する人への、世界が高齢化社会化していることへの対応できる人材教育の制度が急務である。
上記課題を踏まえて、誰もが特に高齢者が安心して世界中のどこにでも旅行ができるよ うに、その環境やシステムを構築することが今後の課題として上げられる。
この残された課題の解決策としては、高齢者、身障者、介助者の旅行についての配慮、不便さの為にその危険性の排除が必要である。
その為には、ユネスコの果たす役割取り分け各国・地域におけるここれらにおける教育(現在はその指導者さえもいない程に、研究が遅れている分野である)は特に重要である。
 「締結国は教育を通じて、自国民が世界遺産を尊重するようになるように努める」と世界遺産条約第27条に規定されているように、世界遺産、あるいはそれに匹敵する文化財をしっかり守って次世代に伝えていく大切さを、教育を通じて若い人たちに認識させる必要がある。
ユネスコは、世界遺産を守るためのガイドラインを盛り込んだ教材を、公用語である英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、中国語の6ヵ国語に加えて25ヵ国語で作成し、各国での教育に反映するよう奨励している。
(最後の6行は『[174]世界遺産の今後の課題と対策Measures and future challenges of world heritage』より引用)